労働契約に関する書類の
整備、説明の不備などから
起こりうるトラブル、
名ばかりの管理職問題などの
事例と対応をご覧いただけます。
1. 入退社時のトラブル
入退社時に発生しやすいトラブルとして、主に次のようなものが挙げられます。
01入社時における回収書類の不備
- 入社時に身元保証書を取っておらず、労働者が会社に損害を与えた時に、損害を賠償させられなかった。
- 労働者に、会社の秘密情報を漏洩されてしまった。
02就業規則や労務管理ルールの説明不足
- 入社時に、就業規則や勤怠ルール(始業・終業の時刻、休憩時間、遅刻欠勤時の手続、休暇取得時の手続等)の説明をしておらず、勤怠管理に関して労働者の誤解を招き、職場が混乱してしまった。
- 入社時に、賃金の構成や支給方法を説明しておらず、未払い賃金等があると勘違いして、労働基準監督署に駆け込まれた。
03試用期間中の解雇に関する説明不足
- 試用期間中の解雇及び試用期間の延長について説明していなかった為に、試用期間中の解雇の際に不当解雇だと言われ、争いになった。
04退職時の回収書類の不備、説明不足
- 退職決定時に退職届等を回収しておらず、退職理由について会社と労働者の見解が異なり、離職票の提出の際に問題となってしまった。
- 退職前に、退職時の義務や手続について説明をしておらず、業務の引継ぎ、通勤交通費や社会保険料の清算、貸与した備品・制服の回収ができなかった。
2. 休職に関するトラブル
休職に関するトラブルとして、主に次のようなものが挙げられます。
01休職時における、労働者の義務を定めていないことによるもの
- 病気で休職している労働者と、次第に連絡が取れなくなり、対処ができない。
02休職中の社会保険料の取扱等に関する説明不足によるもの
- 休職時の本人負担分の社会保険料が徴収できず、何ヶ月も会社で立替をした。その後、本人が復職することなく退職してしまい、最終的に立替えた社会保険料を回収できなかった。
03休職期間の通算等について定めていないことによるもの
- 病気により、欠勤と出勤を繰り返している労働者に対し、休職の適用ができない。
- 復職後、休職時と同様の病気で出勤・欠勤を繰り返す。
- 復職後しばらくして、休職時と同様の病気を理由とした休職事由に該当するため、休職を繰り返す。
04休職期間を一律で定めていることによるもの
- 入社間もない労働者が、休職を申請してきた。
- 休職期間を勤続期間にかかわらず一律で定めているため、勤続期間の短い労働者にも長期間の休職を与えなくてはならない。
3. 名ばかり管理職問題の対応
01管理監督者とは
- 労働基準法における管理監督者 | 労働基準法第41条、労働時間等に関する規定の適用除外
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一、(略)
二、事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
- 通達における管理監督者の基準 | 昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号・婦発47号
「一般的には、局長、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であるが、名称にとらわれず職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等の待遇面から総合的に判断すべきである」とされています。
02管理監督者の判断基準
- 管理監督者として具体的な判断をするに当たっては、以下の3要件を総合的に判断するものとされています。
01「職務内容」・「責任権限」(経営者との一体性があるか)
- 判断の基準
- 実質的に経営者と一体的な立場と言える程度に人事労務管理の権限等を有している。
- 判断の要素
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- 非管理職との職務内容等の違いがあるか。
- 部下の人事(採用、異動、解雇)および人事考課の業務に関与しているか。
店舗においては、アルバイト・パート等の採用・解雇に関する責任と権限があるか。
- 人事・営業・管理等の経営に関する各種重要事項を決定する重要な会議に、制度上の権利として参加し、決議権があるか(少なくとも参加して意見具申の権利を有しているか)。
- 労働時間の管理及び時間外労働の命令権及びその責任を有するか。
店舗においては、勤務表の作成権限等があるか。
02「勤務態様」(出退勤などに自由裁量があるか)
- 判断の基準
- 出退勤についての自由裁量権がある。
- 判断の要素
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- 遅刻早退の取扱はどうか。(これらを理由とする減給や不利益な取扱はないか)
- 労働時間に関する裁量はどうか。自らの判断で労働時間を決められるか。
(例えば欠勤・遅刻・早退の場合、承認を要せず、届出だけで良いか、など)
- 勤務態様が部下と異なっているか。
主として判断業務を行っており、部下の業務(マニュアル的なもの)とは異なっているか。
03「報酬額(月例給・賞与)」(賃金などに優遇措置が取られているか)
- 判断の基準
- その地位にふさわしい処遇(基本給・手当・賞与等)であるか。
- 判断の要素
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- 管理職に就く前の報酬との対比で、名目の如何に係らず実質的な管理職手当や基本給、賞与等の加算により、相当の増額が実現されているか。(優遇措置がとられているか)
- 上記の処遇が、平均的な就労環境にある非管理職との対比で、遜色ない程度に厚遇されているか。